亀の手

奇妙なものを食べたお話です。

ある日、妻もぼくも家に帰ったのが7時過ぎで、冷蔵庫の中の食材も乏しく、疲れていたので子どもを連れて外食にしました。

天満町の電停から50メートルほど東に行くと、黄色い看板のど派手な骨董屋の隣にあるのかないのか分からないほど地味なイタリアン・レストランがあります。自宅からは5分とかからない場所にあります。今、こうやって書いていてもお店の名前がどうしても思い出せません。今朝は、名前があるかないかで妻とちょっとした口論(妻は「ない」と主張)になったくらいです。

レストランは、以前喫茶店だった店舗を改装したものですが、木のテーブルとイスの感じがシックで落ち着きます。無口で無愛想なお兄さんが一人でやっているお店です。ここの名物はなんといっても生パスタでしょう。パスタの注文があると板状のパスタを裁断機にかけて麺にします。ちょうど、うどんのきし麺のようなかたちです。

さて、そのお店のメニューは、季節によって変わります。前に行ったとき食べたものが今回も食べられるとは限りません。昨日は、「亀の手ワイン蒸し」というメニューがあったのでそれを注文してみました。

出てきた料理を見ると、ちょっとのけぞりそうになりました。まるで、食べられることを拒否でもしているかのように、どこをどうやって食べていいのか分からなかったのです。かたちは、確かに「亀の手」のようでしたが、においからして、磯辺の動物のようでした。おそらく、フジツボとかイソギンチャクの仲間ではないでしょうか。先端にはフジツボのような殻があり、根元はゴム引き布のような皮で覆われています。殻と皮の継ぎ目のあたりをぶちっと切り離すと、中に貝のような身が見えました。それで、「ああ、これを食べるんだな」と理解した次第です。味はちょうど淡白な貝のような感じでした。まあまあおいしかったかな。

(後日、そのお店の名前が “OSTERIA DEA” だということが分かりました。やっぱり覚えられないですよね)

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