イブン=ハルドゥーンというイスラムの知性

先週、森本公誠著『イブン=ハルドゥーン』(講談社学術文庫)を読み終わった。
9・11以降の世界で、アラブ世界はテロリストの巣窟という色眼鏡で見られてきた。しかし、「アラブの春」が示したように、イスラム世界の人々は私たちと同じ価値を共有し、自己変革の能力をもっていることは明白だ。
イブン=ハルドゥーンは、14世紀アラブの思想家。政治家、大臣、最高裁判事、歴史学者、経済学者、社会学者と多くの顔があり、当時としては世界最高峰の知性の持ち主であった。
王朝の勃興、繁栄、衰退、滅亡の仕組みを連帯意識(アサビーヤ)という概念を中心に理論づけた。
王朝の発展に市民の経済活動が不可欠なものであることも熟知し、重税が市民を疲弊させ、減税が経済を活性化させ国庫を潤すことも見抜いていた。
さらに、特筆すべきはあらゆる富の源泉が労働であると唱えていたことだ。これは4世紀後にアダム・スミスが体系化した「労働価値説」の先取りである。
私たちは、あまりにもイスラム世界のことを知らなさすぎる。心を開いて、学ぶべきことがあるのではなかろうか。

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