9月9日(土)午後、本通り交差点を東に向かって渡りきったところに、野球帽をかぶったおじさんが立っているのが見えました。薄い雑誌を手に掲げていたので、『ビッグイシュー日本版』の販売員の人だとすぐに分かりました。『ビッグイシュー』というのはホームレスの人々の自立支援を目的として発行されている雑誌で、ホームレスの人だけが販売員になれます。以前、東京の御茶ノ水駅そばの橋の上で買ったことがあります。ホームページから紹介文を引用します。
ビッグイシュー日本版
『ビッグイシュー』は英国で大成功し世界に広がっている、ホームレスの人しか売り手になれない魅力的な雑誌のことです。その使命はホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく彼らの仕事をつくることにあります。1冊200円で販売。110円が販売者の収入になります。
というわけで、 内容も確認せず、早速購入。休憩に入ったカフェで読んだのだが面白かったです。
表紙に奈良美智の絵が使われているとおり、56号のトップ記事は「奈良美智+graf 北国に3ヶ月だけ存在する架空の街『AtoZ』」。青森県弘前市の煉瓦倉庫を会場に開催されている奈良美智の大規模かつ遊び心に溢れた回顧展が紹介されています。 AtoZとは延べ一万人を超えるボランティアが煉瓦倉庫の中に作り上げた架空の街なのです。
10日(日)、いつものようにNHKの新日曜美術館を見ていたら、「アートシーン」のコーナーで、まさにこの展示会のことがトップで紹介されていて、シンクロニシティを感じました。動く映像で見ると、より具体的に身近に感じられます。
同日午後、一人で比治山の上にある広島市現代美術館に出かけました。見に行った特別展は「山村浩二 アニメーション+原画展 可視幻想」というもの。ところがたまたま同時に開かれている収蔵作品展「コレクションを『見る』 夢の話」と題された展示会の中に、奈良美智の作品が1枚あったのです。つくづく、なんという偶然でしょう。これは、青森県まで行ってこいという啓示でしょうか(無理だ。。。^^;)。
さて、ビッグイシュー表紙の作品と、現代美術館の作品はほとんど同じ顔をした少女の絵です。表紙の方は、破壊された大地にレコードを持って佇む少女で、未来の再生への希望を象徴しているのだといいます。現代美術館の少女はレコードを持ってはいません。そして、左右の目の色が違います。右目が赤、左目が青です。これも、人類による破壊と再生への希望を表しているように思えます。
話が前後しましたが、山村浩二さんのアニメーションは最高に味があります。世界各地のアニメーションコンテストで賞を総なめにしているのもうなずけます。
展示のトップは「頭山」、古典落語を現代の東京に置き換えて映像化しています。けちな男がサクランボの種まで食べると、頭から桜の木が生え、そこで花見客が乱痴気騒ぎをするのがうるさくて引っこ抜くと、今度は穴に水が溜まって池になります。池に遊びに来る人々から逃げ出したら、岸にゴミの散乱した池を見つけます。のぞき込むと、自分の頭の上の池にやってくる自分が見え、またその自分の頭の上にやってくる自分が見え… 男はとうとう自分の頭の上にできた池に身を投げて死んでしまうのです。 ありえない話ですが、アニメーションの特性を活かして見事に映像化しています。
懐かしいアニメーションにも再会しました。1995年のクレイアニメーション作品「パクシ」です。イルカから進化した生物であるパクシはお父さん、お母さん、赤ちゃんとの4人暮らし。台詞はありませんが、日常の何気ない出来事をユーモラスに描写しています。元々、NHKの幼児番組「おかあさんといっしょ」の中で放送された作品なので、息子が小さい頃見ていたというわけです。子どもに受けていたかどうかは定かではありませんが、ぼくは大好きでした。
というわけで、アート付いていた週末でした。