昨年亡くなった被爆証言者沼田鈴子さんをモデルにした映画製作の動きを伝える、4月18日付の中国新聞記事です。中心人物の中村里美さんは二十数年前からの友人です。全文を引用します。
《平和記念公園の被爆アオギリの下で証言を続け、昨年7月に87歳で亡くなった沼田鈴子さんをモデルにした映画の製作準備が進んでいる。進行のあった関係者たちが企画。平和の尊さを訴え続けた沼田さんの医師を受け継ぐ。
タイトルは「アオギリにたくして」。沼田さんと二十数年前からの知人のシンガー・ソングライター中村里美さん(48)=東京都町田市=が映画化を仲間に呼びかけた。中村さんは同名の曲を作り、自らのライブで沼田さんの体験を語っている。
沼田さんは原爆で崩壊した建物の下敷きになり左足を失った。惨禍を生き抜いたアオギリの姿に希望を見つけ、証言活動に取り入れた。被爆アオギリ2世、3世を世界に送る運動にも力を注いだ。沼田さんは亡くなる直前まで「生きて伝えなくちゃ」と自らを奮い立たせていたという。中村さんは、沼田さんをモデルに平和を願い続ける被爆者の姿を描く。
映画監督の市川徹さん(63)=横浜市=が中村さんの趣旨に共鳴し、監督を引き受けた。今月初めに製作委員会を結成した。脚本の内容やキャストの選考を進め、来年夏の全国上映を目指す。
「被爆者の高齢化が進み、体験のない世代が伝えていく使命がある。若い人に見てほしい」と中村さん。市川さんは「絶望にあっても、再び立ち上がることができる人間の姿を描きたい」と話している。(野田華奈子)》