「永遠の0」は見ない

まず最初に断わっておきますが、映画「永遠の0」を見た方を非難するつもりは全くありません。

靖国神社参拝を抜き打ち的に強行し、憲法9条改悪を目論む安倍首相を「現代のヒーロー」と持ち上げ、安倍総理からNHKの経営委員に押し込まれた人物が原作を書いた映画を見に行く気がしないだけです。ロードショーに足を運ぶことは、その映画に1票を投票したようなものだと感じるのです。もちろん、将来的に、テレビやレンタルビデオで見ない、とは言いません。

もう一つ、「永遠の0」について感じる問題点は、何人かの人が、「特攻隊のような犠牲に上に戦後日本の平和が築かれた」と感想を書いていることです。特攻による死者は2万人強、ヒロシマ・ナガサキの原爆犠牲者20万人を含む日本人全体の戦争犠牲者数が200万人、さらにアジア全体での戦争犠牲者数が2000万人であることを考慮すると、特攻だけが美化されすぎていると感じます。

ぼくの父は、福岡県大牟田市で空襲に遭い、運悪く赤痢の真っ最中で防空壕に隠れることもままならず、不安な時間を過ごしました。父の兄二人のうち一人は中国で戦死、もう一人はテーラーとして満州にわたりましたが行方不明になりました。

特攻の物語が戦争に対する関心の入口になることは歓迎です。もっと深く、多様で大規模な戦争犠牲者がいたことをぜひ学んでほしいと思います。

チェコの写真家ジョセフ・クーデルカ

プラハの春

プラハの春

今日はチェコスロバキアの写真家ジョセフ・クーデルカ展に行ってきました。会場は東京国立近代美術館です。

1968年、チェコにソ連軍が侵攻した「プラハの春」事件の写真を西側報道機関に提供したことで有名な写真家です。彼は事件をきっかけに故国を離れ、ヨーロッパ各国を転々としながら写真を撮り続けます。代表的なシリーズはチェコ時代から取り始めた「ジプシーズ」、流浪生活の中で出会った風景を写した「エグザイル」です。1984年にパノラマカメラを導入してからの作品群は迫力があります。

彼の写真は、技術的に優れているのはもちろんですが、視線に温かみを感じるのが特徴と思いました。カラーでリアルだったら汚いと思われそうな被写体もアートになっているのが不思議です。
会期は1月13日までです。国立近代美術館のサイトで割引券をゲットすると850円が800円になります。このチケットで常設展も見ることができます。

http://www.momat.go.jp/Honkan/koudelka2013/
http://imaonline.jp/ud/exhibition/520354b96a8d1e35a4000002
http://www.atgetphotography.com/Japan/PhotographersJ/Koudelka.html

浮世絵の歴史が分かる特別展

浮世絵展絵はがき

浮世絵展絵はがき

先日、広島県立美術館で開催中の特別展「写楽、北斎、広重 参上。 平木コレクション特別公開! 浮世絵の美」を見に行きました。浮世絵18世紀に誕生した浮世絵が時代が進むにつれてどのように変化していったかが分かる充実した展示内容です。

初期の作品は人物の細かい表情が分からず、現代の感覚からすると退屈な感じがしますが、黄金期には鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽など個性的で新鮮な表現が登場します。幕末に近い爛熟期には葛飾北斎や歌川広重が活躍します。また、大判彩色版画を3枚つないで横長にした大判三枚続と呼ばれる大型作品も登場します。

初期の頃は人物が中心で画面も平坦な表現が多いですが、後期になると風景画が登場し、遠近法を取り入れた奥行きのある表現になります。

このコレクションでは広重の作品が充実しており、37作品(前期)が紹介されています。中でも素晴らしかったのは「江戸近郊八景」シリーズ、4作品が展示されていましたが、空気感まで表す細密な描写を見せています。素敵でした。

写真の絵はがきは、左上から時計回りに、東洲斎写楽、喜多川歌麿、鳥居清長、葛飾北斎2枚です。

会期は1月14日までです。展示替えが行われ、現在は後期の展示になっています。
http://www1.hpam-unet.ocn.ne.jp/special/index.php?id=83&mode=detail

 

鉛筆の画家・木下晋と元ハンセン病患者で詩人の桜井哲夫

NHK日曜美術館は鉛筆の画家・木下晋。元ハンセン病患者で詩人の桜井哲夫さん(故人)との交流を描く。
 木下氏の絵は、一見、美しいと思えるものではない。描く対象は老人で、鉛筆書きのモノクロで、皮膚に刻まれた深いしわをリアルに描いているからだ。しかし、彼がモデルと向き合っている時の思いについて知ることができたおかげで、作品の中に息づく生命の輝きを少し理解できた気がする。
 20年くらい前、岡山県にあるハンセン病患者療養施設を訪ね、いろんな意味で衝撃をうけたことを思い出した。
 再放送は6月3日(日)20時。

番組のページはこちら:
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2012/0527/index.html

桜井哲夫さんの詩がいくつか紹介されているページはこちら:
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/notice/sakurai_tetuo.htm

「木村伊兵衛 天然色でパリを撮る」を見た

1月22日(日)に放送されたNHK日曜美術館「木村伊兵衛 天然色でパリを撮る」を録画で見た。

写真家木村伊兵衛は、1954~55年に当時日本で開発段階だったカラーフィルムを使い、パリの街を撮影した。司会の千住明と女優の緒川たまきが木村の足跡をたどる。50年前のパリは、カラー写真で見ると、異国の地なのにとても懐かしい気持ちがする。そして、彼が撮影した事物は今日、ほとんど残っていない。

驚くべきことに、試作段階のカラーフィルムはASA10という低感度だ。現在標準の400どころか100でもなく、後者のわずか10分の1だ。単純に言うと、シャッタースピードを普通のフィルムの10分の1にしなければならない。つまり、手ぶれしやすくなる。木村はライカのM3にF1.8の明るいレンズを付け、30分の1秒という遅いシャッタースピードで撮影したそうだ。しかも手持ちである。恐ろしい技術だ。

緒川たまきさんは以前新日曜美術館にレギュラー出演していた。それ以来見かけることがほとんどなく残念に思っていたが、久しぶりに見ることができて嬉しかった。知的で話題豊富なのに、たれ目で、笑顔を絶やさず、雰囲気が柔らかいのである。こんな女性には魅力を感じる。感じたからといって、別にぼくの人生に何か変化があるわけではないが。。。

再放送は1月29日(日)20時から。

http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2012/0122/index.html

映画「恋の罪」

映画「恋の罪」をサロンシネマで観た。かなりヘビーだ。
タイトルには恋とあるが、愛のあるセックスは全く登場しない。

ヒロインの一人である菊池いずみは恵まれた主婦でありながら夫の帰りを待つだけの日常に空虚感を感じ、ふとしたきっかけでセックスと売春にのめり込んでしまう。その世界への手引きをするのが尾沢美津子だ。美津子は有名大学の助教授でありながら毎夜渋谷の廃アパートに街で声をかけた男を連れ込み売春をしているのだ。

1997年に起きた東電女性社員殺人事件にこの映画はインスパイアされている。お分かりと思うが、美津子は殺されるのである。

その事件捜査を担当するのが吉田和子という女性刑事だ。和子は、愛人との関係で精神のバランスを保っているという。この役を水野美紀が演じているのだが、これまでのイメージとのギャップに衝撃を受けた。

人の心の深部にある闇を見せつけるような映画だ。と同時に、人の心がほんとにこんな風になるのか、という疑問も一方にはある。

映画の中で、一つだけ「良し!」と思ったのはラストシーン。女刑事が愛人からの誘いにのらなかった場面だ。この人は衝撃的な事件から人間の一面の真実を受け止め、自分の陥っていた落とし穴から抜け出すきっかけを得たのではないかと感じた。

– 映画「恋の罪」公式サイト http://www.koi-tumi.com/

とおくてよくみえない

広島市現代美術館で開かれている、高嶺格(たかみね・ただす)の「とおくてよくみえない」展を見に行った。印象に残った作品をいくつか書いておきたい。

2次元の部屋
一般の人から送ってもらった毛布や刺繍を枠に貼りつけ、もっともらしい解説文をつけて展示するという作品群。名もない人がつくったものを芸術作品として見せるという試み。古くは、マルセル・デュシャンが男性用小用器に、自分の妹に自分のサインを書かせ、「Fountain (泉)」というタイトルをつけて美術展に出品して物議を醸したが、アートとは何か、アーティストとは誰か、を問いかけるものだ。

ベイビー・インサドン
「在日韓国人である妻との結婚までの葛藤を写真とテキストで綴った」のだそうだ。ぼくが最初に驚いたのは、結婚前に6年間も付き合っていながら彼が在日の問題について全く学ぼうとしなかったことだ(もちろんその後に深く学ぶのであるが)。広島という土地は、在日コリアンも多く、原爆投下時にはおよそ3万人の在日朝鮮人が命を奪われたといわれる。平和活動に関わってきた関係上、原爆被爆の問題を学ぶ中で、在日の問題も学び、考えたからだ。また、妻が在日外国人教育および人権教育の運動に関わってきたので、この問題は日常的に耳にしてきた。

A Big Blow-job
「真っ暗な空間に廃材や不要となった家具とともに文字が照らし出される」という作品。文字は「共有感覚とは何か?」をテーマに書かれている。暗闇の中で、曲線に沿って並べられた文字に光が当てられていくので、一度に全部を読むことができない。そうした不自由な体験を強いることで、見る者に失われた感覚を取り戻させようとしているのだろうと思った。作品のタイトルはヤバい感じだが、学芸員の女性はそのことに全く触れなかったな、そういえば。

とおくてよくみえない
ボランティアとのワークショップから出来上がった作品とのこと。まず、老若男女のボランティアが一人づつ白い陶器で突起を作る (They look like dildos)。突起が地球につながったものであると捉え、世界に立ち向かうために彼らが突起に噛み付く。この動作を「影絵」に記録し、プロジェクターで映写する、というもの。彼らの動作は噛み付くというより、床に置かれた突起を四つん這いで咥えて、頭を上下しているので、それこそ、前の作品のタイトルにある動作に見えてしまうのだ。これに参加した人たち、恥ずかしくなかったのかな? 羞恥心を克服したんだろうな、きっと。それとも、ぼくの見方が間違ってるのかな?

6月25日には作家本人によるアーティスト・トークが行われるそうだ。

あの日、欲望の大地で

シネツイン新天地で上映されている映画「あの日、欲望の大地で」を見た。
一言で語ることはできないが、素晴らしいストーリーテリングに拍手。大人の映画だ。

http://www.saloncinema-cinetwin.jp/

http://yokubou-daichi.jp/

Martin Creed 展

広島市現代美術館に行ってきた。今の特別展は「Marin Creed(マーティン・クリード)」、イギリスのアーティストだ。

http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/web/main/special_exhidition.html

チラシには次のように紹介してある。

マーティン・クリード(1968年生まれ、ロンドン在住)は、1990年代初頭に活動をはじめ、日常とアートが境なく続いていることを、時にユーマルスに、またラディカルなほどシンプルな形体や手法によって表現してきました。2001年にはイギリスで活躍する現代美術家に授与される「ターナー賞」を受賞し、その活動は国際的にも大きな注目を集めています。

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イベント、アート、ボサノバ、映画の2週間

少々ずぼらかもしれませんが、この2週間の出来事をまとめて書いておきたいと思います。

11月16日(日)午前 国際交流・協力の日

平和のためのヒロシマ通訳者グループ (HIP)として、「ひろしまを英語でガイド」というプログラムを担当しました。広島の主要観光スポットを英語でガイドするための入門講座です。今回のテーマは「比治山」。受講者数は68人。HIP会員の参加者およびチューターの外国人を合わせた人数は26人と盛況なイベントとなりました。講座後のアンケートでは、「大変良かった」が78%、「まあまあ良かった」が22%と、プラス評価が100%で高い評価を得ました。皆で苦労して教材や運営の準備をしてきたので嬉しかったです。

11月16日(日)夕方 キャンドルメッセージ

ICBUWヒロシマ・オフィス主催のイベントに参加。劣化ウラン兵器の禁止を求める文字「BAN DU NEXT」を1000本のグラスキャンドルで描くというもの。主催スタッフは皆顔見知りなので、当然のごとく裏方をお手伝いしました。キレイでしたよ。

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